魔法のリストボードを使って力を抜きやすくするハノン

私は、フィンガートレーナーとして、長年脱力に悩む方たちと接してきました。
その中で一番伝えることが難しいのは、
手首と指の感覚をどう区別するかということでした。
手首の力を抜いて、指だけを動かす感覚、そして、指先を意識すること
これらが、頭で理解してもなかなか思うようにいかないのを見て、
それを補う何かはないだろうかと考案したのが魔法のリストボードです。

魔法のリストボードを装着すると、一時的に手首を固定しますので、
指だけを動かす感覚を呼び覚ますことができ、脱力への近道となります。
その一方で以前から私は、手首と親指の関係にも注目して来ました。親指にいつも力が入っている、
付け根がペッコンと支えられない、など、小さいお子さんから大人まで親指の悩みを抱えている方はとても多く、不思議なことにそういう方はそろって脱力が苦手のようです。

親指の力が抜けない理由は2つあると思います。

一つ目は、人間に備えられた機能です。親指は、もともと物をつかむために他の4本の指と離れてついています。
『つかむ』『握る』をすると手首は固まります。固まらないと物がしっかり持てないからです。
つまり、親指を使う=手首固める という関係が成り立っています。
ところが、ピアノではそうはいきません。和音などを弾くときは手首を固めないといけませんが、スケールやレガートを弾くときは、親指を使いつつ手首は『柔軟に』が要求されます。

もう一つは、親指を使う感覚です。
人間は、指を『握って』生まれてきます。成長とともに物がつかめるようになり箸が持てるようになり・・と5指を自由に使えるようになるのですが、どんな場合でも親指を使わないということはありません。つまり、「指を使う」という感覚は「親指を使う」ことが大前提なのです。また、手の構造上、親指でバランスをとりながら他の4本の指を動かしているとも言えます。
ピアノを弾く上で5指の独立した動きは必須ですが、親指のみならず他の4指をそれぞれ動かす感覚すらも親指に影響されてカモフラージュされている場合が多いと私は考えています。
この2つの理由から、指を使う=親指を使う=手首固まる となり
それによって『力が抜けない』、『弾きづらい』という悪循環になるのではと思っています。

魔法のリストボードを装着することで、手首の力を抜いて親指だけを動かす感覚は養えますが、
逆に他の4指を使っている時に親指の力を抜くというのがとても難しいと感じました。

また、親指は、関節も太く手のひらに大きな筋肉(母指球筋)があり、日常生活でも自然と使っているので力が強く、鍵盤に下ろすだけでも音は出ます。それに対して特に4の指、5の指は細く筋肉も弱いのでしっかり打鍵をしようとすればするほど親指に力が入り干渉がひどくなります。
この悪循環を断つための具体的な方法として
まず、親指と他4指の感覚を切り離すこと
親指の干渉なしに他の4指それぞれの筋肉を使って、特に弱い4・5の指を鍛えること
また、親指との連結が強い人差し指(2の指)を独立させて動かすこと
それらがわかってから、親指本来の筋肉を動かしていくほうが近道ではないかと思い
この『親指なしのハノン』を作りました。

このハノンは運指に1がありません。
すべて2、3、4、5で弾くようにできています。
魔法のリストボードを装着の際、親指が動かないようにゴムの中に固定して
弾いてください。そうすることで、より他の4本の指への感覚が鮮明になります。
もちろん、魔法のリストボードがなくても練習はできますが、自然と親指に力が入りやすくなりますので初めのうちはリストボードを装着しての練習をお勧めします。
<親指なしのハノンの特徴>
*1の指は使いません。すべて2・3・4・5の4指で弾きます。
*すべてハ長調で、黒鍵は使いません。
*1オクターブの往復で、長くても16小節となっています。
*右手と左手が3度、または6度の音程で構成されています。
*大きく4つのカテゴリーに分かれています。
A 4本の指を動かして
B 2と3、4と5の指間をひろげて
C 2と5を開く
D 3と4の指間をひろげて
それぞれ6曲ずつ 全部で24曲あります。

<練習の仕方>
慣れるまでは魔法のリストボードを両手に装着して
* 腕や手首に力が入ったり、押したりしないようになるべく小さな音で練習してください。
従来のハノンのように『大きく』『速く』は必要ありません。
4本の指をそれぞれほぐすように指は大きく動かしてください。
*離鍵に注意してください。次の指が打鍵した時には前の指は鍵盤から離れるように
*腕や肩に力が入っていないか確認しながら弾いてください。
*どのカテゴリーから始めてもかまいません。番号が進むにつれ、複雑になっていますので、
それぞれの1番から始めるやり方もあります。
ただ、まだ手が小さい方はDは難しいかもしれません。
ご自身の指に合わせて練習してください。
*どの曲も短いですが、長時間の魔法のリストボードの使用はお控えください。(3〜4曲を目安に)
*3〜4曲練習したあと、リストボードを外してもう一度弾いてみてください。
指が軽く動くことを体感されると思います。
その時に、親指の力が抜けて 他の指が動いても影響されない程度になればしめたものです。

慣れてきたら
* 少し大きな音で弾いてください。特に弱い4の指、5の指にアクセントをつけるなど
工夫をしてください。また、テンポも上げてください。
* 他の4本の指の感覚がはっきりしてきたら、親指を使って好きな運指で弾いてみたり、
従来のハノンに移行してください。
その時、親指が打鍵し他の指に移行した時、力が入っていないか確認してみてください。
<最後に>
力を抜いてラクに弾ける基本は、指や身体のコントロールが上手にできることです。
指をどのように使えば良いかも大事ですが、使ってない指をいかにリラックスさせるかが
コントロールの鍵になると私は思っています。
この親指なしのハノンでより自由に指が動かせるようになることを願っています。

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『親指なしのハノン』併用曲集 『おしゃべりな8本指』

作曲 安倍美穂

監修 水谷稚佳子   ミュッセより発売中

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